耐震制震と免震住宅

1.建物の地震対策

現在の建築基準法による基準では「震度5強」で無損傷、「震度6弱」それ以上では部分的な損傷はするが「倒壊はしない」を目標としています。つまり、建築基準法の最低限(1.0)で建てられた家は「震度6弱」以上の地震の時は倒壊はしないけれど、壁や柱梁などが損傷をしその後の生活には補修・建て替えが必要となります。建築基準法は万全な法律ではありません。

いかに損傷を少なくするかは施主の考え方や設計方法に関わってきます。ただ、家づくりには予算がありますので今どこにお金を掛けるべきなのか・・・対策には次の段階的な方法があります。

耐震住宅の場合

006-hd.jpg

耐震住宅の考え方は構造体と呼ばれる柱・土台・梁で囲まれた壁が地震の力で変形しない様に「ガッチリ」させる工法です。土台・柱・梁で囲まれた長方 形の壁が地震により平行四辺形の様につぶされます。この変形を止めるために「筋交い」「構造用合板」で固めて行きます。この壁を「耐力壁」と呼びます。筋 交いは地震時に左右に揺らされて釘だけでは外れてしまいますので「筋交い金物」で補強して外れないようにします。構造用合板は厚さ9mm以上で釘はN50 と呼ばれる太さ長さの釘で、150mm以下の間隔で打っていきます。また、「耐力壁」はただたくさんあれば良い訳ではなく、建物にあわせてバランスよく設 置する必要があります。基礎は地盤や建物の重さによって別に構造設計されます。

まるみ建築工房では耐震住宅を採用した場合は建築基準法の最低基準「1.0」ではなく「1.5」を目標に設計を行います。性能保障のレベル3に匹敵する耐震基準です。

制震住宅の場合

kn-200504-54-kanamono1.jpg

耐震性能を上げても無損傷まであげることはかなり難しくまた費用も掛かります。その損傷を減らすために制震装置と呼ばれる地震の揺れ幅を軽減させる 装置を設置していきます。1階の床の揺れ幅は耐震住宅と同じですが、2階の床の揺れ幅は30%程度軽減させることができます。地震には余震が伴います。最 初の地震で耐震化された耐力壁はなんらかの損傷を起こします。余震がくれば最初の耐力壁の力がだんだん発揮できなくなっていきます。その分の揺れも制震装 置が軽減してくれます。新築で20カ所程度設置します。

 耐震補強工事の場合は建物が「ガッチリ」していないので揺れやすい建物ですが、制 震装置をつけることにより2階の揺れ幅を30~80%減らし建物の倒壊を防ぐことができます。耐震補強では4~8カ所程度設置します。(耐震工事の場合に はどこをどれだけ強くするか、またはどれだけ揺れ幅を軽減させるかの補強計画が必要です)

免震住宅の場合

建物の倒壊は耐震・制震で防ぐことはできますが、少なからず建物に損傷は残ります。
また、家具などの転倒被害を少なくするには免震住宅の導入が必要になります。

免震住宅の説明は次の「2.免震住宅とは」をごらんください。

2.免震とは

免震とは、建物の足元を地面から切り離し、その間に免震装置を組み込んで地震の激しい揺れを受け流す構造です。そのために、建物が受ける地震力は従来の耐震構造に比べて大幅に低減され、建物の安全性が向上するとともに、建物内の人々や家具、設備機能も安全に保つことができます。

m-1-1.gif m-1-2.gif
通常の住宅・耐震住宅   免震住宅

  免震装置の種類 

1205_m-1-3b.gif

■転がり免震支承

ボールまたはローラーの転がり摩擦で、地震力を低減
摩擦係数が最も小さく、免震性能が最も高い

1205_m-1-4b.gif

■すべり免震支承

すべり摩擦で、地震力を低減
転がり免震支承ほど摩擦係数は小さくなく、免震性能も良くない

1205_m-1-5b.gif

■積層ゴム免震支承

ゴムの変形により地震力を低減
木造鉄骨造等の軽量建物では固有周期が伸びないため積層ゴム単独では免震しない

 

免震装置にはいろいろな種類があります。これまでに建築物に採用されている免震装置の多くは積層ゴムを用いたもので、この積層ゴム免震支承はビルなどある程度重さのある建物には有効ですが、木造・鉄骨造の戸建て住宅などの自重の軽い建物には効果が期待できませんでした。
これに対し、転がり免震支承による IAU型免震システムは木造・鉄骨造等の軽量な戸建て住宅にも対応でき、優れた免震効果が期待できるものです。
  

3.「1/16免震」

IAU型免震住宅では、下図に示すように、阪神大震災の最大加速度観測波の地震入力加速度を1/10程度にまで低減します。一方、耐震住宅(通常の住宅)の場合、地震入力加速度は2階床面において、1.5~2.5倍近く増幅されます。IAU型免震住宅と耐震住宅とを2階床面同士で比較すると、IAU型免震住宅の応答加速度は耐震住宅の応答加速度に対して1/16となっています。また、東海地震想定波(政府中央防災会議)による実大実験においても地震入力加速度を1/10に低減することを確認しています。

ob-a-gkb90a.gif

阪神大震災の揺れ

グレーの線が地震の揺れ
青い線が免震を使った住宅の2階の床の揺れ
(未装着時の1/10程度に低減しています。

ob-aq-g.gif

観測史上最大加速度記録の2004年新潟県中越地震川口町
観測地震波のさらに増幅波の揺れ

グレーの線が地震の揺れ
青い線が免震を使った住宅の2階の床の揺れ
(未装着時の1/13程度に低減しています。

4.震度7を震度4の揺れに低減

IAU型住宅用免震システムでは、震度7の揺れを震度4に低減できる場合もあります。
これは、地震入力加速度に対する建物の応答加速度を1/13にまで低減できる高い免震性能によるものです。

※震度7には加速度の上限がなく、計測震度8や9でも震度7のため、すべての震度に対して震度4に低滅できるわけではありません。

5.システム構成 

IAU型免震システムは、
     (1) 転がり免震支承
     (2) 引抜き防止付転がり免震支承
     (3) 全方位対応型油圧ダンパー
     (4) 風揺れ固定装置

の4種類の免震装置から、構成されます。

(1) 転がり免震支承

m-2-sisyoujpg.gif転がり免震支承は、免震の基本装置です。
ボールベアリングは摩擦の中で最も小さいものです。このボールベアリングを利用して地震力を建物へ伝えにくくします。


(2) 引抜き防止付転がり免震支承

m-2-BIRGsisyoujpg.gifこの転がり免震支承だけですと、地震時・風時の建物が浮上ります。
引抜き防止付転がり免震支承は、この地震時・風時の建物が浮上り(引抜き)を防止する装置です。
さらに、地震時の捩れ、風時の回転を抑制する装置です。


(3) 全方位型油圧ダンパー

m-2-danpajpg.gif全方位型油圧ダンパーは、大きな地震の過大な変位(揺れ幅)を抑制する装置です。 特に想定外の大地震の過大な変位(揺れ幅)を抑制して、ストッパーへの衝突を緩衝する装置にもなっています。


(4) 風揺れ固定装置

m-2-koteijpg.gif以上の装置だけでは、ある一定以上の風で揺れます。

風揺れ固定装置は、その風揺れを防止する装置です。
平常時はロックされ500年に1度の台風時の風揺れさえも抑え込みます。
地震時にはそのロックが解除し、地震後に固定が復帰します。 一連の動作を完全自動で、且つ電源等を全く必要とせずに行います。
免震装置配置例


1206_m-4-1b-2c.jpg

6.地震・台風に対する安全性

(1)連続地震に対する安全性

本免震システムは 、連続地震、余震に対応できるように、地震後必ず建物は
元の位置に戻り、次の地震に対して対応できます。これまでの数多くの実大実験
 では、1回の実大実験において、100波以上の連続加振を行い、建物は元の
位置に戻ることを確認しています。2004年10月の新潟中越地震のような連続
地震や余震に対応するためには、地震後に建物自体が免震装置により元の位置
に戻ることが必須の条件となります。

(2)縦揺れに対する安全性

引き抜き防止付き転がり免震支承により、地震時の縦揺れによって建物が浮き
上がることはありません(引き抜き防止付き転がり免震支承は暴風時の
浮き上がりにも抵抗します。)  

(3)共振に対する安全性

本免震装置は 、固有周期をもたない装置のため、どのような地震に対しても
加速度が大きくなるという共振現象を起こしません。最近になって問題視され
始めた長周期の地震に対しても安全です。

(4)500年に一度の台風の風揺れ抑制

風揺れ固定装置により、500年に一度の台風(500年再現期待値に相当する
暴風)に対しても風揺れに抵抗します。2004年には最大瞬間風速50m/Sを超える
 台風が7度上陸し、日本各地で被害をもたたらしましたが、本免震システムでは
全く問題ありませんでした。

7.完全自動で電源不要

地震発生から終了までの装置の作動はすべて全自動で行われます。
電力は一切使用しないため、停電や断線等で免震システムが作動しないということはありません。 

(1)平常時         (風揺れ固定装置により基礎と固定状態)

kikou-01.jpg

平常時は、基礎上に設けられた風揺れ固定装置の固定ピンが、建物の架台に設置された上部受皿に差し込まれ、基礎と建物とを固定します。 風による回転に対しても、引抜き防止付転がり免震支承の回転抑制機能が、安全に回転を抑止します。

(2) 地震時         (風揺れ固定装置の解除で免震状態へ)

kikou-02.jpg

センサーが地震力を感知すると、風揺れ固定装置の固定ピンが下がり、基礎と建物との固定を解除して、転がり免震支承によって建物は自由に水平移動できるようになります。

(3) 地震時         (免震状態)

kikou-03.jpg

地震時、転がり免震支承によって、建物は地震の揺れを吸収します。 このとき応答変位が大きくなり過ぎないように、全方位型油圧ダンパーが変位を抑制します。

(4) 地震終了後 →(1)へ         (風揺れ固定装置の復帰で固定状態へ)

kikou-04.jpg

地震時、解除していた風揺れ固定装置の固定ピンは、地震後自動的に復帰し、建物と基礎とを固定します。

以上の(1)~(4)の動作を、全く電源等を使用せず、完全自動で行います。

8.3階建てや鉄骨造にも対応

幅広い適用性

本免震システムは、「高さ60m以内」かつ「基礎免震※1」であれば、建物の構造・階数・面積・用途・建物形状等の制限なく、確認申請だけで建てられます※2。
※1免震層(免震装置設置層)の位置が基礎部にある場合
※2第三種地盤や液状化の恐れのある地盤は除きます。

また、大地震時に建物は地盤に対して約30cm動きますので、建物周囲の設備・造作物・建築物・植木などとの間に所定の距離(水平クリアランス)を確保しなけれぱなりません。

(1)構造の制限なし

対象となる構造は、在来工法・ツーバイフオー等の木造のみならず、鉄骨造についても適用可能です。また、基礎についても、布基礎、べ夕基礎、杭基礎等いずれの基礎構造でも適用可能です。

(2)階数の制限なし

高さ60m以内なら階数制限※はありません。当然、3階建ての住宅にも適用できます。
※法的には階数制限はありませんが、免震支承の耐圧性能から、高層建物には経済性等の面からあまり向いていません。

(3)建物形状の制限なし

建物形状に制限はありません。特に、多様な平面形に対応できるのが本免震システムの最大の特長の一つでもあります。

(4)木製架台によるコストダウンの実現

近年の鋼材の値上がにりより、鋼製架台にかかる費用が高騰しました。
そのため、従来の鋼製架台に加え、構造用単板積層材(LVL)や構造用集成材を使用した木製架台を開発し、コストダウンを実現しました。

9.免震住宅の費用

今までのIAU型免震システムでの概算の費用です。
免震装置・輸送費・鋼製架台・工事費・基礎UP分・設備UP分・仕上UP分・構造設計料を含んでいます。

25坪(基礎・免震部分の面積)で18万円/坪前後です。
25×18=450万円(総二階で50坪の家)

40坪(基礎・免震部分の面積)で15万円/坪前後です。
40×15=600万円(総二階で80坪の家)
※基礎の形状により差があります。

通常の40坪程度の住宅で、基礎面積は20~25坪程度となりますので免震住宅は目安として約450万円のUPとなります。
高級国産車一台で地震後の建物の補修費用を抑え、またなりよりもお金には換えることの出来ない人命を守ることができるのです。

免震システムについてご不明な点は、当事務所にご連絡ください。
  

前に戻る